2017年8月に開催された遊戯王OCG世界大会「Yu-Gi-Oh! World Championship 2017」(WCS2017)。
中でも注目を集めたのが、世界大会という大舞台で「チェーンバーン」デッキを操り切って見事優勝してみせた小学生の部・優勝者のRyan Yu(ライアン・ユー)選手。真竜や恐竜族といった強力なモンスターを展開するデッキが猛威を振るう中、環境のメタを突き、魔法・罠カードの効果ダメージで相手ライフポイントを削りきる戦法で優勝を飾りました。
WCS2017小学生の部で優勝したライアン・ユー選手へのリスペクトを込め、彼の使用デッキを見ていきましょう。
【WCS2017小学生の部】ライアン・ユー選手がチェーンバーンで優勝
チェーンバーンとは
チェーンバーンとは遊戯王OCGにおいて、チェーンを積み上げ、カード効果によって相手ライフポイントを0になるまで削りきることを目指すデッキです。
主役となるカードは《連鎖爆撃(チェーン・ストライク)》。発動時に積まれているチェーンの数を参照して、チェーン数×400ポイントを削る効果を持ちます。《仕込みマシンガン》とチェーンすることで比較的簡単にダメージを増やし、対戦相手に大きな効果ダメージを与えられます。
《連鎖爆撃(チェーン・ストライク)》
速攻魔法(準制限カード)
チェーン2以降に発動できる。
このカードの発動時に積まれているチェーンの数×400ポイントダメージを相手ライフに与える。
同一チェーン上に複数回同名カードの効果が発動している場合、
このカードは発動できない。
《仕込みマシンガン》
通常罠
(1):相手の手札・フィールドのカードの数×200ダメージを相手に与える。
チェーンとは?
そもそも遊戯王におけるチェーンとは何か、補足として説明します。
チェーンとはあるカード効果の発動に対して、別のカード効果が連続して発動されることです。
プレイヤーAが自陣の罠を発動したとします。 プレイヤーBはプレイヤーAの効果発動に対し、チェーンを続ける権利を持ちます。プレイヤーBがチェーンを続けると、次のチェーンの権利が最初に効果を発動したプレイヤーAに戻ります。
このようにチェーンは基本的に交互に続きます。ただし対戦相手がチェーンを続けなかった場合、プレイヤーAは自分のカード効果に対し、チェーンを積むこともできます。つまり対戦相手がチェーンを積まなくとも、自分でチェーンを連続して積み上げることもできます。
チェーンが積み終わると、続いて効果の処理に移ります。チェーンの処理はカード効果の発動順に対し、遡るようにして行われます。一番最後に積まれたチェーンの効果をまず処理し、一番最後にはじめに発動したカード効果を処理します。チェーンについては、さらにこちらの記事で詳しく解説しています。
モンスター採用枚数は最低限
チェーンバーンデッキは前述した《連鎖爆撃(チェーン・ストライク)》を中心にチェーンカードを扱い、モンスター効果ダメージではなく魔法・罠の効果ダメージでライフポイントを削ります。
よって一般的なデッキに比べて、モンスター採用枚数は最低限。代わりに速攻魔法や罠の比重が高いです。メインモンスターゾーンに1枚もモンスターを置かない状態で展開を進めることも少なく有りません。
魔法・罠カードの5枚伏せで相手を待ち構える回し方
モンスターの採用枚数が少ないことから、必然的に初手に魔法・罠を多く引き当てることになります。《強欲で謙虚な壺》などドローソースを初手に引き当てれば、より積極的なドローも可能。
揃えたカードを魔法&罠ゾーンに5枚伏せ、相手の攻撃を待ち構える回し方がメインとなります。
《連鎖爆撃(チェーン・ストライク)》《仕込みマシンガン》《おジャマトリオ》で相手のライフポイントを削りつつ、《和睦の使者》《威嚇する咆哮》で自分への致命傷は避け、《ディメンション・ウォール》などのカードで追撃していく展開となります。
効果ダメージ(チェーンバーン) vs 戦闘ダメージ(真竜)の決勝は名勝負に
チェーンバーンは遊戯王OCGの主要大会では、いわゆる「地雷デッキ」扱いを受けてきました。地雷デッキとは環境での流行・主流デッキから外れたデッキのことです。
遊戯王は基本的に、強力なモンスターを召喚して戦闘ダメージを与えて勝利する「ビートダウン」が主流。近年流行している大量展開系のデッキも主にビートダウンを目指すものです。
WCS2017・小学生の部の決勝戦はまさに「地雷デッキ」と「ビートダウンデッキ」の直接対決。チェーンバーンを操るライアン・ユー選手に対し、対戦相手のRafael Mariano Reich選手は真竜デッキ使い。戦法がまるで異なる両者のデュエルは、一勝一敗で4ターン制限のエキストラデュエルにもつれ込む名勝負となりました。
ライアン・ユー選手はインタビューで「自分の強みは運」と語る
WCS2017を制したライアン・ユー選手は自身の強さについて、インタビューで「自分の強みは運」と語ります。ここにおける運とは、ビートダウン主流の環境に置いてバーンデッキが対策されず、自分が得意とする展開に持ち込みやすかったことを指しているのではないでしょうか。
WCS2017では予選から、ライアン・ユー選手のフィールド上のモンスターや魔法・罠の効果テキストを対戦相手が繰り返し読む場面が見られました。多くの選手にとって彼の使うカードは奇特で、回し方が読めないこともあったでしょう。
WCS2017優勝 チェーンバーンデッキの特徴
ライアン・ユー選手のWCS2017優勝・チェーンバーンデッキの特徴を見ていきます。
《ダイス・ポット》のピン挿し採用
お互いサイコロ振って相手の目より小さいプレイヤーは相手の出た目×500のダメージを与える。同じならお互い振り直し、6の目で負けたプレイヤーは6000の大ダメージを受ける
俺のバーンデッキのエース! pic.twitter.com/UWh1Htu4LH
多くの遊戯王ファンに衝撃を与えたのが、世界大会決勝のメインデッキに《ダイス・ポット》が採用されたことです。ダイス・ポットはリバースされると、互いにサイコロをふり、相手より小さい芽が出たプレイヤーは出た目に応じたダメージを受けます。
仮に6の目が出た場合は、サイクロで負けたプレイヤーは6000ポイントの大ダメージを受けます。ちなみにほとんどの場合で2000以上のダメージが発生しますが、ダメージを受けるのが「自分なのか、相手なのか」はサイコロ次第。
相手に強烈なダメージを高確率で与えるには《出たら目》がほぼ必須。《出たら目》を使用すると、およそ90%の確率で相手に2000以上のダメージを与えられます。
ちなみに、WCS2017の決勝で実際にリバースされた《ダイス・ポット》は《召喚獣メルカバー》で効果を無効にされました。そのため決勝の場でサイコロが振られることはありませんでした。《召喚獣メルカバー》の効果を使用してでも《ダイス・ポット》を防いだ点に、このカードの危険性が伺えます。対戦相手からしたらタイトルマッチで、自分の運命をサイコロに賭けるわけにはいかなかったのでしょう。
効果発動が無効になったとはいえ、決勝にギャンブルカードを採用するライアン・ユー選手の大胆不敵さは凄まじいものがあります。
《業炎のバリア-ファイヤー・フォース》の効果ダメージ
通常罠
(1):相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊し、
自分はこの効果で破壊したモンスターの
元々の攻撃力を合計した数値の半分のダメージを受ける。
その後、自分が受けたダメージと同じ数値分のダメージを相手に与える。
相手ライフポイントを削るバーン効果がついた《聖なるバリア – ミラーフォース -》が《業炎のバリア -ファイヤー・フォース-》。相手ライフポイントを削る代わりに、自分もダメージを受けるというデメリットがあります。
WCS2017では《召喚獣メルカバー》の攻撃に対して《業炎のバリア -ファイヤー・フォース-》を発動。加えて《連鎖爆撃》《仕込みマシンガン》も発動し、一気に4250ポイントを削り取る場面が見られました。チェーンバーンデッキとの相性は最高レベルの1枚と言えるでしょう。
《強欲で貪欲な壺》 《命削りの宝札》の積極採用
《強欲で貪欲な壺》
通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分のデッキの上からカード10枚を裏側表示で除外して発動できる。
自分はデッキから2枚ドローする。
《命削りの宝札》
通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できず、
このカードを発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。
(1):自分は手札が3枚になるようにデッキからドローする。
このカードの発動後、ターン終了時まで相手が受ける全てのダメージは0になる。
このターンのエンドフェイズに、自分の手札を全て墓地へ送る。
《強欲で貪欲な壺》《命削りの宝札》といったコストの大きいドローソースを積極的に採用しているのも、WCS2017優勝チェーンバーンデッキの特徴です。
チェーンバーンデッキでは《積み上げる幸福》をドローソースとして採用するケースが多いですが、WCS2017デッキでは《ダイス・ポット》採用に見られるようにより相手に大ダメージを与えうる尖った構築となっています。そうした攻撃的な姿勢はドローソースのセレクトにも現れています。
《ディメンション・ウォール》《和睦の使者》で致命傷をうまく避ける
チェーンバーンでは自陣のフィールドにモンスターが並ばない局面も多いです。そうした一見、危険に見える局面でも5枚伏せのメリットを生かして《ディメンション・ウォール》や《和睦の使者》で攻撃を跳ね返したり、受け流すことが可能な構築となっています。
サイドデッキに《ブラック・ホール》搭載
前述の通り、自陣にモンスターがあまり並ばないチェーンバーンは《ブラック・ホール》との相性が良いです。強力な全体除去である反面、自陣のモンスターも巻き添えにして破壊するのが《ブラック・ホール》の欠点。しかしチェーンバーンではその欠点が致命的なものとはなりません。
地味に効く《仕込み爆弾》
チェーンバーンは《ハーピィの羽根箒》をはじめとする魔法・罠カードを破壊するカードに弱いです。魔法・罠カードを破壊されたとしても地味に相手のライフを削り取るのが今回の構築の特徴。
《仕込み爆弾》は、該当カードが墓地に送られた際に相手ライフを1000ダメージ削る効果を持ちます。《ハーピィの羽根箒》で《仕込み爆弾》が墓地に送られても、相手にもダメージを与えられる点で考え抜かれた構築です。
【WCS2017小学生の部優勝・チェーンバーンデッキ】モンスター
枚数 | モンスター |
2 | 《絶対王バック・ジャック》 |
1 | 《聖なる魔術師》 |
1 | 《増殖するG》 |
1 | 《ダイス・ポット》 |
1 | 《時械神ラツィオン》 |
【WCS2017小学生の部優勝・チェーンバーンデッキ】魔法
枚数 | 魔法 |
3 | 《強欲で謙虚な壺》 |
2 | 《強欲で貪欲な壺》 |
2 | 《命削りの宝札》 |
2 | 《連鎖爆撃》 |
【WCS2017小学生の部優勝・チェーンバーンデッキ】罠
枚数 | 罠 |
2 | 《裁きの天秤》 |
2 | 《業炎のバリア-ファイア・フォース-》 |
2 | 《ディメンション・ウォール》 |
3 | 《自業自得》 |
3 | 《無謀な欲張り》 |
3 | 《仕込みマシンガン》 |
3 | 《仕込み爆弾》 |
3 | 《威嚇する咆哮》 |
1 | 《和睦の使者》 |
1 | 《破壊輪》 |
2 | 《おジャマトリオ》 |
【WCS2017小学生の部優勝・チェーンバーンデッキ】エクストラデッキ
枚数 | エクストラデッキ |
1 | 《デコード・トーカー》 |
2 | 《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》 |
2 | 《森羅の姫芽宮》 |
2 | 《ゴーストリック・デュラハン》 |
1 | 《No.13ケインズ・デビル》 |
1 | 《No.63 おしゃもじソルジャー》 |
1 | 《No.39希望皇ホープ》 |
1 | 《Sno.39希望皇ホープONE》 |
1 | 《Sno.39希望皇ホープ・ザ・ライトニング》 |
1 | 《ガガガンマン》 |
1 | 《No.82ハートランドラコ》 |
1 | 《迅雷の騎士ガイアドラグーン》 |
1 | 《真紅眼の鋼炎竜》 |
【WCS2017小学生の部優勝・チェーンバーンデッキ】サイドデッキ
枚数 | サイドデッキ |
2 | 《時械神ザフィオン》 |
2 | 《DDD反骨王レオニダス》 |
1 | 《人造人間サイコショッカー》 |
3 | 《フォッシル・ダイナ パキケファロ》 |
1 | 《妖精伝姫-カグヤ》 |
1 | 《妖精伝姫-シラユキ》 |
2 | 《ブラックホール》 |
2 | 《女神の加護》 |
1 | 《サイコ・ショックウェーブ》 |