遊戯王VRAINSとは?
遊戯王VRAINSは2017年5月からテレビ東京系で放映中のアニメ『遊☆戯☆王』シリーズ。アニメ『遊☆戯☆王』シリーズとしては6作目に当たります。
舞台はネットワークが高度に発達したデンシティ。SOL テクノロジー社による高度な技術を活用し、人々はLINK VRAINSと呼ばれるVR空間の中でVRデュエルを楽しんでいます。
しかしある時、LINK VRAINSに攻撃を仕掛けるハッカー集団「ハノイの騎士」が出現。その脅威に立ち向かう謎の決闘者「Playmaker」の正体は、遊戯王VRAINSの主人公である藤木遊作。
主人公・藤木遊作とは
主人公・藤木遊作は非常に頭が切れる高校生。《デコード・トーカー》《ファイアウォール・ドラゴン》を切り札に、今作で初登場するテーマ《サイバース族》を使用しています。
第104話からはAiの反乱が描かれ、Aiと遊作のデュエルが見所となります。
LINK VRAINSではハノイの騎士に挑む謎の決闘者「Playmaker」として戦いに挑んでいます。彼の戦いの背景には「ロスト事件」と呼ばれる暗い過去が存在します。
監督は細田雅弘
遊戯王VRAINSの監督は1998年「遊☆戯☆王」で演出を務め、劇場アニメ『ドラゴンボールZ 神と神』の監督として知られる細田雅弘氏。
しかしハノイの騎士編の序盤である第14話を境に、浅野勝也氏に制作を引き継ぎます。
第14話から浅野勝也が引き継ぎ
第14話から監督を務めるのは、マッドハウス出身の浅野勝也氏。「カードキャプターさくら」の動画や「侵略!イカ娘」の絵コンテ・原画を務めた経験を持ち、監督を担当するのは「遊戯王VRAINS」が初。
細田氏から浅野氏に監督が変更となった経緯は不明です。とはいえ制作当初から、一定のタイミングで有望な人材に初監督を任せることが既定路線だったのかもしれないですね。
遊戯王VRAINSの設定
遊戯王VRAINSのメインテーマは「一歩を踏み出し、トライしよう!」。
「情報過多により、実際に経験する前にあきらめてしまう子どもたちに向け、自分の好きなこと、興味があることに対して、一歩を踏み出し、トライしてほしい」という狙いを持ち、バーチャルリアリティ(VR)や人工知能(AI)の要素を積極的に作品に組み込んでいます。
2019年9月で最終回が確定した「遊戯王VRAINS」
アニメ「遊戯王」は5D’s以降、一作につき3年間のスパンで制作・放映されています。2017年5月から放映スタートした「遊戯王VRAINS」はアニメ『遊☆戯☆王』シリーズの通常のスパンに照らし合わせると、2020年4月に放映終了の予定でした。
しかし2019年10月から同枠にて「あひるの空」の放送が決定。「遊戯王VRAINS」の2019年9月での、通常より半年早い打ち切りが確定したのです。
アニメ『遊☆戯☆王』シリーズは通常140話構成ですが、「遊戯王VRAINS」は20話以上の削減が確定。事実として「遊戯王VRAINS」は日常回やネタ回がほぼ存在せず、デュエル中心の構成。アニメ『遊☆戯☆王』シリーズのファンからするとキャラクターの掘り下げが足りず、物足りない印象を与える原因にもなっていました。
遊戯王VRAINSには根強い打ち切り説が存在していた
「遊戯王VRAINS」は早くから9月打ち切りの可能性を指摘されていました。発端となったのは雑誌に掲載された第117話「交わらない道」の予告。「そして遊作とAiは、世界の未来をかけた最初で最後の戦いを始める」と記載されています。
仮にデュエルに数話を費やしたとしても9月中に物語が完結するだろうとファンの間で話題となりました。
この予測は正しく、実際に「遊戯王VRAINS」は9月で終了が決定しました。
「遊戯王VRAINS」はつまらないクソアニメ?面白い?評価・感想
「スピードデュエル」「スキル」などの新要素はポジティブ
「遊戯王VRAINS」で登場した新要素「スピードデュエル」と「スキル」。
スピードデュエルは遊戯王OCGで初心者向けに設定されたルールであり、ライフポイントとデッキ枚数が半分であることが最大の特徴。「遊戯王VRAINS」ではLINK VRAINS空間でDボードと呼ばれるサーフボード状のボードに乗って、データストームの風を受けてデュエルする演出で描かれます。
「スキル」はデュエリストに紐づいて設定されている特殊能力。各プレイヤーがデュエル中に一度だけスキルを発動できます。「スキル」は遊戯王デュエルリンクスに同様の要素が存在します。
まず「スキル」。アニメの視聴者層の中には、初めて触れた遊戯王カードが遊戯王OCGではなく、デュエルリンクスであるという人もいるでしょう。デュエルリンクスから遊戯王に関心を持った人にとって馴染みのある要素を展開することは作品への関心を強める効果が期待されます。
加えてVRAINSで登場するリンク召喚は、本来はプレイヤーとカードの結びつきの強さを示す演出がされて然るべきでしょう。プレイヤーがカードの効果を発動するだけでなく、能動的にデュエルの展開にも加わることができる要素があることは作品にプラスになり得ます。似たような例では「ポケットモンスター サン&ムーン」の「Zワザ」が挙げられます。
そして「スピードデュエル」。スピードデュエルのメリットはカード枚数が少なくて済むため、初心者でも低価格に強力なデッキを組みやすいこと。入門編の構築として最適です。スピードデュエルを魅力的に描くことで、遊戯王OCGの未経験者に対する販促が期待できます。
またアニメ作品としてもデュエルを短時間で描くことが可能。デュエルを長引かせず、その分をキャラクターの描きこみや日常回に使い、作品を深めることができるはずです。
よってこの両要素へのチャレンジは前向きに評価するべきと考えます。
しかしながら、実際には「遊戯王VRAINS」は打ち切りになった事実を見ても、あまり高評価は得られなかったと考えるべきでしょう。その理由は何か。近年の遊戯王アニメが置かれている状況と、VRAINS特有の問題点の両面から考えてみましょう。
近年の遊戯王アニメへの評価はそもそもやや低め。感想もネガティブ寄りが多い
近年の遊戯王アニメへの評価は、そもそも全体的にやや低め。感想もネガティブ寄りのものが多いです。
遊戯王アニメに対して批判的な声が増えてきたきっかけとなったのは「遊戯王ZEXAL」。アニメ独自のドローソースを作るなど、遊戯王のファンにとって受け入れられない要素が多く批判を呼びました。ZEXALからVRAINSまでの3作をまとめて駄作三部作と呼ぶ声もあります。
ですが、管理人の個人的な意見ではZEXAL、ARC-Vと比較して、VRAINSにはチャレンジングな要素が目立ち、前向きに評価すべき作品だと考えています。ZEXALも評価すべき点は多数あると思います。
直近の遊戯王3作品を1つ1つみていきましょう。
遊戯王ZEXAL
まずは遊戯王ZEXAL。2011年4月から2014年3月まで放送されました。GXや5D’sが初代との世界観のつながりを保っていたのに対し、ZEXALでは世界観が刷新されました。
ZEXALは原作者の高橋和希氏が携わったアニメシリーズでもあり、低年齢層を取り込もうとする工夫が随所にみられます。尖った敵役キャラ、「シャイニングドロー」など子供心をくすぐるカード、デュエルシーンの適度な省略。
「唐突に回想シーンが挟まり、気づいたらデュエルが終わっていた」という批判もありますが、あくまでこの作品のターゲットは子供。管理人はターゲット層に対しては的確な演出であると思います。VRAINSのデュエルシーンが大人向けで、省略が全く無く、ソリティアも10分以上かけて描かれるのとは正反対。ZEXALとVRAINSは同一シリーズでありながら、別のベクトルを向いていると言えるでしょう。
遊戯王ARC-V
遊戯王アニメに対して「つまらない」という評価を決定づけたのは「遊戯王ARC-V」です。遊戯王ARC-Vは残念ながら擁護できる点が非常に少ない、失敗作と位置付けられるでしょう。
遊戯王ARC-Vの問題点は多くありますが、遊戯王OCGとのタイアップ作品であることを踏まえると最大の失敗点は「カードゲームで戦う意味が無い」点に集約されるでしょう。
主人公は「カードゲームを悪用した戦争を止める」「カードゲームで人々を笑顔にする」ことを最大の目的に行動します。しかし遊戯王ARC-Vではやっても意味のないデュエルや、そもそもカードゲームを使わずとも直接相手に危害を加えることができる行動が多く、ズァークとの最終決戦ではズァーク1名に対して11名のデュエリストが乱入してバトル。カードゲームのルールを作品自ら崩壊させています。ZEXALからARC-Vで作品の人気・質がともに下落し、厳しい目線が遊戯王シリーズ全体に向けられるようになった側面は否めないでしょう。
遊戯王VRAINS
遊戯王ARC-Vに次ぐ作品として放映が開始されたのが「遊戯王VRAINS」です。VRAINSはZEXALで問題視されたデュエルの省略や「シャイニングドロー」に代表される独自要素、ARC-Vで問題となったカードバトルの無意味さといったネガティブな点を丁寧に解消しています。
遊戯王VRAINSで描かれるスピードデュエルは遊戯王OCGの初心者ルールを踏まえており、スキルはデュエルリンクスに準拠。カードバトルにも意味が与えられており、なおかつ省略もありません。
遊戯王VRAINSは過去の反省を生かす一方で、後述するような新たな問題点が浮上してきた作品といえます。
遊戯王VRAINSがつまらないと言われる理由
シリアスな作風
遊戯王VRAINSは、アニメシリーズの中でももっともシリアスな作風に仕上がっています。
復讐を誓う主人公。ロスト事件の真相。間接的とはいえ、死者が出ている描写。相棒として絆を保っていたはずの主人公とAiの対立。全体的に重いテーマを扱っており、なおかつ20話以上の削減の影響で息抜きとなる回もあまりありません。
毎週のように重い展開と後述する長いバトルを見せられて、疲れてしまった視聴者から「つまらない」という声が上がっています。こうした視聴者はもう少しコメディ要素や初期遊戯王にたまにある”ネタ回”を求めているのでしょう。
日常回の無さ
前述の通り、遊戯王VRAINSにはほぼ日常回がありません。大きく分けて理由は2つ。1つは20話以上の削減の影響。もう1つはデュエルを省略なく丁寧に描く方針をとったことで、バトルが長期化。純粋に枠が確保できなくなったのでしょう。
キャラの掘り下げが行われない
日常回がなくなったことで、キャラの掘り下げが従来のシリーズよりも浅くなったことはVRAINSの失敗点と言えます。例えば、主人公・遊作。遊作のデュエルへのスタンスは従来の遊戯王の主人公には見られない斬新なものでした。しかし回数を経るにつれ、物語は遊作とAiの絆へと重点を移していきます。
絆や友情はこれまでの遊戯王でも中心的に描かれてきたテーマです。従来の遊戯王の主人公と全く異なるキャラクターを主人公に起きつつも、絆や友情といったテーマをも引き継ぐのであれば、どこかの回で主人公の決定的な心境の変化を描く必要があります。
しかし日常回がなく、デュエル中の回想シーンもないVRAINSではキャラの掘り下げが全般的に浅いです。結果として主人公・遊作は視聴者に「これといったエピソードも無いのに、突然絆に目覚めたキャラクター」のような印象を与えてしまっています。
デュエルが長い
VRAINSはZEXALのように、デュエル中に回想シーンを挟む事をせず1つ1つのドローや召喚を丁寧に描いています。ターンを飛ばす演出が皆無であることは、過去シリーズではターンを飛ばすことが多かった点を踏まえると、間違いなく意図的な演出でしょう。
必然的にデュエルの場面が長期化するため、解決策として持ち込まれたのが「スピードデュエル」と考えられます。しかしなぜかVRAINSは回数を経るごとに、スピードデュエルが忘れ去られていきます。
デュエルで長いソリティアが行われる
スピードデュエルが忘れ去られたVRAINSのデュエルはどうなったのか。
リンク召喚など遊戯王OCG準拠の複雑なルールを視聴者に伝えつつ、「スキル」の要素も描きこみ。ターンを飛ばさないため一枚一枚のドローも演出付きで描きこみ。立ち絵が延々と続くのは望ましく無いため、カットも切り替え。召喚口上もキャラクターが口にします。
結果としてデュエルで長いソリティアが行われることになり、先行1ターン目で10分以上使うこともしばしば。30分の放送枠の3分の1を、盤面を揃えるだけの場面に費やすことになりました。
デュエルを丁寧に描く方針はカードゲームのアニメとして間違っているとは決して思いません。しかしシリーズ全体に置いてデュエルと日常回のバランスはもう少し調整されても良かったのではないかと思います。
FWDの禁止カード化
主人公が使用するエースカード《ファイアウォール・ドラゴン》は2019年1月に禁止カードに指定されています。放映中アニメの主人公が使用するエースカードが禁止カードに指定されるのは異例中の異例で、史上初のことでした。
《ファイアウォール・ドラゴン》の禁止に先駆けて、同等の効果を持つ《キャノン・ソルジャー》・《トゥーン・キャノン・ソルジャー》・《メガキャノン・ソルジャー》・《アマゾネスの射手》が禁止カードに指定されてもいます。《ファイアウォール・ドラゴン》は主人公のエースモンスターのため、周辺カードを禁止にしつつ制限入りに長らく留まっていました。
《ファイアウォール・ドラゴン》の優遇や、主人公のエースモンスターが遊戯王OCGの環境で壊れカードとして機能してしまったことを重く見て、VRAINSに批判的なスタンスをとる人もいます。
リンク召喚とアニメ演出はそもそも相性が悪い?
遊戯王VRAINSで新たな召喚方法として登場したリンク召喚。リンク召喚とは、リンク素材を揃えてエクストラデッキからリンクモンスターを特殊召喚する召喚方法。アニメで演出するにはリンク素材を揃える工程やエクストラデッキの描写も必要であり、演出の難易度が高め。リンク召喚を用いたデュエルを描くという意味で、VRAINSはそもそもデュエルシーンにて課せられたハードルが高すぎた面も否めないかもしれません。
総集編が多い
予算とデュエルシーンのハードルの高さの影響か、VRAINSは総集編的な回が全体的に多かったことも特徴です。過去回のつなぎ合わせで作られた回が多すぎた点への批判は少なくありません。
遊戯王VRAINSのキャラクター設定に関する問題点
主人公が陰キャ・ぼっち
主人公が陰キャ・ぼっちであり、友人らと楽しく会話をする場面があまりないことを「つまらない」と指摘する声もあります。とはいえこの点は、初代遊戯王の主人公・武藤遊戯ももともと似たような性格ではあります。遊戯王VRAINSの藤木遊作もデュエルを通じた人間的成長などが深く描かれれば、特に問題はなかったでしょう。
主人公にデュエルを楽しむ描写がない
しかし遊作はロスト事件の影響で、復讐心に支配されたキャラクターです。デュエルを「楽しむ」という発想が、その出自の影響でありません。よってデュエルシーンが長い割にシリアスで、笑顔がなく、遊戯王の本来的な視聴者層である子供の支持を得られないものに仕上がってしまっています。
遊戯王VRAINS打ち切りの影響は?
2020年に新シリーズが確定している
2020年に遊戯王の新シリーズが決定しており、シリーズ全体の打ち切りの心配は不要です。ただし半年のタイムラグがあるため、この半年間でVRAINS打ち切りの要因やARC-Vに代表される失敗作の検証が進み、新シリーズに強く影響する可能性はあります。
初代遊戯王のリメイク・続編も考えられる?
20周年を迎えた遊戯王。キャラクター造形や物語のテーマ設定には現在も初代遊戯王の影響が色濃く残っており、遊戯王OCGの商品展開も初代を強く押し出したものとなっているケースが多いです。
もしかしたら20周年のアニバーサリーを迎え、初代のリメイク、もしくは続編も次のシリーズであるかもしれません。
こちらの記事で遊戯王アニメの新シリーズの最新情報と考察・予測される内容をまとめています。
追記
2019年12月の「ジャンプフェスタ2020」で、遊戯王アニメシリーズ最新作「遊戯王SEVENS」と新たなデュエル方式「遊戯王ラッシュデュエル」が発表されました。遊戯王ラッシュデュエルは、従来の遊戯王OCGとは別のカードゲームと位置付けられており、カードデザイン・カードプール・ルールが全て異なります。
「遊戯王SEVENS」以降のアニメシリーズは、遊戯王OCGではなく、遊戯王ラッシュデュエルを取り扱うものと予測されます。
こちらの記事で「遊戯王ラッシュデュエルとは何か」「遊戯王ラッシュデュエルと遊戯王OCGの違いは何か」「遊戯王ラッシュデュエルの導入の狙いは何か」「リンク召喚導入〜遊戯王VRAINSまでのOCG・商品展開は失敗だったのか」を細かく解説しています。ぜひ参考にしてください。