【TCG】「スタン落ち」って悪いこと?なぜ必要?M:tG・遊戯王OCG・シャドバの対応比較

2019年にカードプールが1万種を突破した遊戯王OCG。

20周年のアニバーサリーイヤーを終えた後、膨張したカードプールを一新。「スタン落ち」を導入し、新規ユーザーへの間口を広げる構想があるのではないか?と一部のSNSやデュエリストの間で噂されています。事実としてカードパワーのインフレやリミットレギュレーションは「遊戯王はオワコン」という世評の根拠の1つとなっています。

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遊戯王がオワコン・つまらないと言われる理由!ユーザー離れ・インフレの背景考察
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「スタン落ち」とは現行レギュレーションを「スタンダード」と見なし、「スタンダード」に含まれているカードをレギュレーションの改定日を境に大会環境で使用できなくすることを指します。多くの場合、スタン落ちしたカードには「レガシー」「アンリミテッド」など古いカードも使用可能な別の大会が受け皿として用意されます。


今回は

  • 「スタン落ち」を導入しているマジック:ザ・ギャザリングとシャドウバース
  • 「スタン落ち」を導入していない遊戯王OCG

の環境を比較し、それぞれのメリット・デメリットを検討。遊戯王OCGはスタン落ちを導入すべきか考えてみたいと思います。

管理人は遊戯王OCGのスタン落ち(ローテーション)は条件付きで前向きな立場です。初心者への間口を広げる意味でスタン落ち(ローテーション)は導入すべき。一方で古いカードプール資産が遊戯王OCGの魅力を下支えしており、スタンダード環境が圧倒的な力を持つ「シャドウバース」とは異なり、レガシー環境・アンリミテッド環境をもっとも権威ある大会と位置付ける工夫が必要と考えます

「スタン落ち」とは?

「スタン落ち」とはTCG(トレーディングカードゲーム)の主に大会向けレギュレーションの1つです。現行の環境をスタンダードと見なした上で、一部のカードプールを特定の日を境に使用禁止に位置付けます。

例えば、シャドウバースの場合「スタン落ち」を「ローテーション」という名称で導入しています。シャドウバースの「ローテーション」では最新5つのパックと一部のプライズカードのみがランクマッチや大会で使用可能です。



「スタンダード」というルールをもっとも古くから導入しているTCGがマジック:ザ・ギャザリング。

マジック:ザ・ギャザリングの場合は直近2年に発売した5~8つの基本セット・エキスパンションがスタンダード環境で使用可能。1年ごとにローテーションが行われます。

スタン落ちを導入しているTCGの例

タイトルスタンダード環境モダン環境レガシー環境
マジック:ザ・ギャザリングスタンダードモダンレガシー
シャドウバースローテーションアンリミテッド
ポケモンカードスタンダードエクストラ殿堂

3つの主要なカードゲームのレギュレーションを上の表にまとめました。

レガシー環境とは禁止カードを除き、それまでに発売された全てのカードを使用できる環境を指します。モダン環境とは、スタンダードとレガシーの中間に位置します。特定時期のパック〜最新パックまでを使用できる環境のことです。

シャドウバースにはモダン環境が存在せず、スタンダード(ローテーション)とレガシー(アンリミテッド)のみが存在します。

スタン落ちを導入していないTCGの例

スタン落ちを導入していないカードゲームの代表格は、遊戯王OCGです。

遊戯王OCGはスタン落ちを導入しない代わりに、基本的に禁止カード・制限カード・準制限カードの見直し(リミットレギュレーション)を通じてゲームバランスの調整を行なっています。

スタン落ちはなぜ必要?メリット

スタン落ちの最大のメリットは「ゲームバランスの調整がしやすい」ことにあります。

例えばM;tGのスタンダード環境では直近2年のパックが使用可能で、1年ごとにスタン落ちが行われます。カードプールが制限された状態で、1年ごとに環境がリセットされるため、カードパワーのインフレを適度に抑えることが可能です。

また新規プレイヤーにとっては買い揃えるパックやシングルカードの数を抑えることができます。スタンダード環境では大会上位のプレイヤーと初心者のカード資産の差を、比較的小さく保つことが可能。よって新規プレイヤーにも広く門戸を開くことができます。


また挑戦的な新規テーマやカテゴリ、カード効果の実装がしやすいというメリットもあります。仮にプレイヤーの反感を呼ぶ実装を行なったとしても、カードプールを入れ替えることが可能なためです。

スタン落ちって悪いこと?デメリット

プレイヤーにとっては「フォーマットごとのレギュレーション」を把握することが必要であり、ルール把握の難易度がやや上がります。また「スタンダード環境で猛威を振るったカードが、モダン環境では通用しない」というケースがしばしば発生します。


加えて、各フォーマットの大会をそれぞれ活性化していくための工夫が運営に求められます。例えばM:tGであればスタンダード、モダン、レガシーの各環境が大会で盛り上がっており、各フォーマットの醍醐味も異なります。一方でシャドウバースの場合は、ローテーションに人気が集中しており、アンリミテッドの活性化は「まだこれから」という段階。

スタンダード(ローテーション)よりも広いカードプールを持つ大会が盛り上がらなくては、カードプールは時間の経過とともに「紙くず」となってしまい、ゲームとしての長期的発展が見込めなくなるという課題があります。

M:tGのスタン落ちのレギュレーション

M:tGのスタンダード環境では直近2年のパックを使用でき、1年ごとにローテーションが行われます。M:tGのスタン落ちのレギュレーションはより詳しく、こちらの記事で解説しています。>>>【M:tG】2019年のスタン落ち!どのカードが落ちる?アリーナのローテーションも解説

【M:tG】2019年のスタン落ち!どのカードが落ちる?アリーナのローテーションも解説
2019年10月、マジック:ザ・ギャザリングの最新パック「エルドレインの王権」が発売となりました。 「エルドレインの王権」発売に伴い、2018年に発売された複数パックがスタン落ち(ローテーション)の対象となり、デッキの強弱が大きく変動...

初心者のプレイヤーはまず直近2年のパックを複数購入し、デッキを組んだ上、徐々にモダン環境に移行していくケースが多いです。

例えば「エルドレインの王権」からM:tGを始める場合、「ラヴニカのギルド」「ラヴニカの献身」「灯争大戦」「基本セット2020」を併せて購入するとスタンダード環境に必要なカードは揃います。

モダン環境では禁止カードを除き、第8版(2003年発売)以降のカードプールを使用でき、ローテーションは存在しません。


またモダンに移行しない場合は、1年ごとにパックを買い足してスタンダード環境でプレイを続けることになります。

シャドウバースは「ローテーション制」としてスタン落ち導入


シャドウバースでは最新5つのパックのみが使用できる「ローテーション制」を導入しています。シャドウバースでは3ヶ月に1度、新パックが追加されます。よってローテーションは3ヶ月ごとに行われる形です。

環境に君臨するデッキであっても3ヶ月に1度、デッキの強弱が大きく変化する形です。アナログTCGに比べて、スタン落ちのペースが早めなことが特徴的です。一方で年数を重ねるごとにスタン落ちしたカードプールが膨れ上がっていくため、今後はアンリミテッドルールの活性化も期待されます。

遊戯王OCGにはスタン落ちが存在しない

遊戯王OCGにはスタン落ちが存在せず、代わりにリミットレギュレーションが存在します。遊戯王OCGのリミットレギュレーション改定は第9期以降、3ヶ月に1度のペースで定期的に行われています。

3ヶ月に1度のペースでの改定はシャドウバースと同ペースですが、使用可能なカードプールを最新5つに絞っていない分、カードプールが広いことが遊戯王OCGの特徴でもあります。

スタン落ちを導入したカードゲームの環境はどう変わる?

シャドウバースは「ローテーション制」が圧倒的主流

シャドウバースは2017年12月のローテーション制の導入後、ローテーション制がランクマッチや大会環境で主流となっています。ローテーション制に人気が集中する理由は、シャドウバースが2016年にサービスを開始したまだ歴史が浅いカードゲームであることも一因でしょう。新規ユーザーが増え続けている段階でもあり、カードプールが500枚程度に制限され、初心者でもランクマッチへの出場を目指しやすいローテーション制が広く受け入れられているものと考えられます。

シャドウバースはプロリーグの運営にも積極的であり、徐々にアンリミテッド環境の強化が進むと思われます。

M:tGの場合は国内はスタンダードとモダンが主流

M:tGの場合、国内ではスタンダード環境とモダン環境が主流です。レガシー環境は本国・アメリカでは一定の支持がありますが、日本国内ではモダン環境の方が人気です。

M:tGのレガシー環境に人気が集まっていない理由は、デッキ構築にかかる費用の高額さと初期カードの入手難易度の高さが挙げられます。M:tGの初期には「パワー9」と呼ばれる強力なカードが存在することが有名。再録されていないカードも多く、カード資産の差がそのまま勝敗に繋がることが多いです。

よって適度にカードプールが制限されつつも、スタンダードより使用可能なカードが多い「モダン」は人気のフォーマットです。

リミットレギュレーションでカードプールを管理する遊戯王OCGは実は貴重な存在

ここまで遊戯王OCG・シャドウバース・M:tGの環境の違いを見てきました。

シャドウバースの「ローテーション制」やM:tGの「スタンダード制」と比較すると、リミットレギュレーションに準拠さえしていれば20年以上前のカードであっても最新の大会環境で使用できる遊戯王OCGは特異なカードゲームであることが分かります。

ただし遊戯王OCGのリミットレギュレーションは禁止入り・制限入りの基準がわかりづらく、レギュレーションそのものに運営の意思が良くも悪くも色濃く現れます。「どのカード資産が次の改定で価値を失うか」が予測できないことに、デュエリストからは不満の声も多いです。

遊戯王OCGはスタン落ちを導入すべきなのでしょうか?

スタン落ちを導入すると古いカード資産が生かされづらい

遊戯王OCGの魅力を下支えしているのは、20年の歴史とその間に培った膨大なカード資産。そしてM:tGやシャドウバースには無い、人気が高い漫画・アニメシリーズの存在です。原作漫画・アニメで登場キャラクターが使用したカードを現実でも使用でき、フォーマット制による制限も(リミットレギュレーションを除けば)存在しないことは大きな魅力です。

スタン落ちを導入すると、スタンダード環境では古いカード資産を使用できなくなります。新規プレイヤーにとっては間口が広くなり、デッキ構築に必要なカードを集めやすくなり、カードパワーのインフレも適度に抑えられます。

一方で遊戯王OCGの持つ魅力の一部が削がれることは否めません。

スタン落ちを導入するなら「レガシー環境」に権威を与える仕組みが必要

管理人はスタン落ちを導入するなら、遊戯王OCGの頂点のフォーマットを「レガシー環境」とする仕組みが必要と考えます。

スタンダード環境に人気が集中し、レガシー環境が不人気という環境を作り出すと1万種類を超えるカードプールの魅力を活かせなくなるためです。たとえばM:tGやシャドウバース、デュエマにはプロリーグが存在しますが、遊戯王OCGにはプロが存在しません。

スタンダード環境は小学生〜大人まで幅広い間口を担保。レガシー環境はプロリーグとして整備していくといった棲み分けには一考の余地があるかもしれません。
追記

2019年12月の「ジャンプフェスタ2020」で、遊戯王アニメシリーズ最新作「遊戯王SEVENS」と新たなデュエル方式「遊戯王ラッシュデュエル」が発表されました。遊戯王ラッシュデュエルは、従来の遊戯王OCGとは別のカードゲームと位置付けられており、カードデザイン・カードプール・ルールが全て異なります。
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