【リンク召喚は失敗だった?】遊戯王新ルール導入による引退増加の振り返りと今後

2020年4月から新マスタールールが導入される遊戯王OCG

2020年4月から第11期の新マスタールールが導入された遊戯王OCG。融合・シンクロ・エクシーズモンスターをエクストラデッキから召喚する場合、リンクモンスターのリンク先以外のメインモンスターゾーンにも召喚可能という大幅なルール変更が行われ、融合・シンクロ・エクシーズ軸の構築ではリンクモンスターを並べる必要がなくなりました。
第11期の新マスタールール導入は、多くのデュエリストに好感をもって受け止められています。今回のマスタールール改定と対照的に、多くのデュエリストの引退を招き「リンクショック」と呼ばれる状態を引き起こしたのが2017年、第10期の新マスタールール。「リンク召喚」を新ルールとして導入したものです。リンク召喚は引退するデュエリストを生み、新規ユーザー獲得に繋がらず、リンク召喚を物語の重要なファクターとしても扱った「遊戯王VRAINS」も失敗に終わりました
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管理人はリンク召喚は、カードゲームの奥深さを生むギミックとしては一定の評価をしています。一方で遊戯王OCGが、遊戯王のアニメシリーズを主要なメディアミックス先としてティーン向けに展開するゲームであるならば「よりルールを複雑化するマスタールール改定の意義は薄かった」とも評価せざるを得ないでしょう。つまり、2017年のリンク召喚導入に対して管理人は「ゲームとしての奥深さは認めるものの、展開するターゲット層とのミスマッチは否定できない」と考えています。


2020年の新マスタールールは、遊戯王OCGからのプレイヤーの引退を招く可能性は低く、20周年のアニバーサリーや過去カードのリメイクと併せ「引退したものの復帰するプレイヤー」が増えるケースが多く考えられます。
一方でラッシュデュエルの新設については、多くの部分が未知数でもあります。

今回は2020年4月の新マスタールールとラッシュデュエル新設について、ポイントを1つ1つ見ていきつつ、過去に多くのユーザーの引退を招いた「リンク召喚」を振り返り。リンク召喚の導入はそもそも失敗だったのか、というテーマも検討していきます

2020年4月の新マスタールールのポイント

2020年4月の新マスタールールでは、6つの改定が行われました。

融合・シンクロ・エクシーズモンスターをエクストラデッキから特殊召喚する場合、リンクモンスターのリンク先以外のメインモンスターゾーンに特殊召喚することが可能。
テキストに記載された場合を除き、デッキ及びエクストラデッキに裏側表示で戻ったモンスターの効果は(例え強制効果であっても)発動しない。
効果の発動前に、発動する場所に存在しなくなったカードの効果は(例え強制効果であっても)発動しない
モンスターの召喚・特殊召喚が効果の発動条件に影響する「発動するターン」というテキストを持つカードは、その召喚・特殊召喚が無効化された場合はその制約を受けない。
同名カードを含めて1ターンに1度しか特殊召喚できないテキストを持つモンスターは、最初の特殊召喚が無効になった場合は2体目を同一ターンに特殊召喚できる。
発動後にモンスターゾーンに特殊召喚される罠モンスター(永続罠)は、特殊召喚後に魔法&罠ゾーンを圧迫しない。

やはりもっとも大きな変更は融合・シンクロ・エクシーズモンスターをメインモンスターゾーンに召喚可能となること。他の変更点で、管理人が注目しているポイントは罠モンスター(永続罠)の扱い。罠モンスターは従来、特殊召喚後もセットされていた魔法・罠ゾーンは使用不可でした。しかし新ルールでは罠モンスターの特殊召喚成功後は、セットされていたゾーンは空白扱いとなり新たなカードをセット可能。特殊召喚時に任意の種族・属性を宣言でき、攻撃力も高い《鏡像のスワンプマン》や、1800打点のアタッカーとしての運用および自爆特攻からのバーンダメージを狙える《死霊ゾーマ》など罠モンスターの活躍の幅が広がりました

全体的には「リンク召喚の弱体化」と「従来の遊戯王OCGルールへの回帰」を印象付ける今回の改定。なおかつラッシュデュエル新設により、ティーン向けへのアプローチも感じさせます。ポイントを見ていきます

ラッシュデュエルの新設


2020年4月に発売開始した「遊戯王ラッシュデュエル」。遊戯王の原作シリーズをベースに、遊戯王OCGとは異なる「第二のカードゲーム」として誕生しました。

遊戯王OCGと異なる特徴は大きく分けて3つ。

1つ目はカードデザインと効果テキスト。

遊戯王OCGの効果テキストは長文で文字が小さく、プレイヤーによって裁定の解釈が異なることもままあります。一方「遊戯王ラッシュデュエル」の効果テキストは「条件」と「効果」が分けて記載されています。初心者のプレイヤーにとっては「自分がそのカードを、今発動できるのか」を判断するには「条件」を読めば良く、発動できる場合の効果は「効果」を読めばOKです。

2つ目は「1ターンにモンスターを何体でも召喚可能」。遊戯王OCGでは通常召喚は一回まで、特殊召喚は条件を満たせば何度でも召喚可能。一方、ラッシュデュエルでは通常召喚を何度でも行うことができます。

3つ目は「毎ターン手札が5枚になるようにドロー」。毎ターン手札が5枚になるようにドローし、モンスターを何体でも召喚可能というルールのため「大量展開と大量ドローで派手にデュエルする」ゲームデザイン。遊戯王ラッシュデュエルをメインとするアニメシリーズ「遊戯王SEVENS」の放映もはじまり「遊戯王ラッシュデュエルは子供向け」「遊戯王OCGは大人向け」という棲み分けが始まりました。

2020年4月の新マスタールールは「リンク召喚が相対的に弱体化」

遊戯王OCGの新マスタールールでは、融合・シンクロ・エクシーズモンスターがメインモンスターゾーンに召喚可能となりました。2017年以降のマスタールールではエクストラモンスターゾーンが新設され、複数隊のエクストラデッキのモンスターを召喚するには、まずエクストラモンスターゾーンに使いやすいリンクマーカーを持つモンスターを展開。リンクマーカーの先に他のエクストラデッキのモンスターを置くという工数を踏む必要がありました。

エクストラモンスターゾーンに融合・シンクロ・エクシーズモンスターを置くこともできますが、それらのモンスターはリンクマーカーを持ちません。よって複数隊のエクストラデッキのモンスターを展開することができず、相手がリンク召喚メインのデッキの場合に不利となる可能性があります

2020年4月の新マスタールールによって、融合・シンクロ・エクシーズモンスターをメインモンスターゾーンに召喚することが可能となったため、たとえば融合軸のデッキであればリンクモンスターを採用する必然性がなくなり、デッキの枠をより有効活用。なおかつ「リンクモンスターを召喚する」手間がなくなり、展開がスピーディーになりました。
リンクモンスターはエクストラモンスターゾーンに召喚後、リンクマーカーの先のモンスターに特殊効果を与えるモンスターとしての位置付けが強まりました。リンクモンスターが展開の主軸となっていた2017年以来の環境と比較すると、実質的にリンクモンスターが弱体化しています。

そもそもなぜリンク召喚は不評なのか。なぜ新ルールは引退を招いたのか

2017年のリンク召喚の導入は「リンクショック」とも呼ばれ、多くのデュエリストの引退を招きました。なぜリンク召喚は引退を招き「失敗」と呼ばれるのでしょうか。

リンク召喚反対派の意見

リンク召喚を介さないとEXデッキを実質的に活用できない

もっとも大きな反感を買ったのは、融合・シンクロ・エクシーズモンスターの使用制限がリンク召喚の導入によって一気に進んだこと。これらのエクストラデッキのモンスターは高価格帯のカードも多く、リンク召喚がなくては展開が成り立たず、引退を余儀なくされるデュエリストも多数でした。

またリンク召喚が導入された2017年4月は、時期的に「魔の9期」と呼ばれる遊戯王のインフレ期とかぶります。たとえばペンデュラム召喚の導入。2020年現在、ペンデュラムゾーンは魔法・罠カードの両端と統合されたことで存在感が弱まっています。しかし登場当初は専用のペンデュラムゾーンが用意され、モンスターの大量展開が容易になりました。ペンデュラム召喚により、先行を獲得したプレイヤーがモンスターを大量展開。相手の効果発動を無効化するモンスター効果や魔法・罠も大量使用し、1ターンでほぼゲームエンドというデュエルが横行していました

カードパワーのインフレも進み、ゲームバランスも崩れていました。たとえば《Emヒグルミ》は搭乗後、わずか167日で禁止入り。そのほかにも9期のカードは今も多くが制限・禁止に指定されています。


こうした「魔の9期」を経験したことで、2017年時点で疲弊したデュエリストが多数存在。そしてマスタールールが改定されることで、自身のカード資産の価値が暴落。この2つが折り重なることで、リンク召喚は多くの引退を招いたのです。

魔の9期を「終わり」にするためには、「大量展開の抑止」と「環境の低速化」が必要だったことは間違いないでしょう。解決策としてリンク召喚を導入することは、ゲームバランスの面では悪くない判断だったとも言えます。一方、多くのデュエリストのカード資産を大きく落とす改定であったことも事実です。また新規ユーザーにとっては非常にルールがわかりづらく、ゲームの売り上げ低迷を招きました。2020年4月の改定では、リンク召喚が弱体化する一方《処刑人マキュラ》が制限復帰。【サイコショッカー】も強化が入り、罠カード関連のゲームバランスに大きな変化が起きる予兆が見られます

フィールドの「場所」の概念が無駄に複雑


リンクモンスターには「リンクマーカー」が明記され、リンクモンスターのマーカーの向きが大きく展開に影響します。それまでの遊戯王OCGには存在しなかった「カードの置き位置が重要」という考え方に馴染めないデュエリストも存在しました。

EXゾーン追加による【おジャマ】など妨害戦術の弱体化


エクストラモンスターゾーンが新設されたことで、相手のメインモンスターゾーンをトークン送りつけや《地盤沈下》によって埋め、展開を封じ込める戦法が弱体化しました。

たとえば《おジャマトリオ》によって3体のトークンを送りつけた場合、トークンはアドバンス召喚のためにリリースできず、妨害戦術として有効です。しかしエクストラモンスターゾーンとリンク召喚が新設されたことで、トークンがリンク素材として利用可能に。実質的に《おジャマトリオ》によるトークン送りつけは、敵に塩を送る行為となってしまい、妨害戦術としての役目を実質的に終えました。

リンク召喚賛成派の意見

読み合いの深さが生まれた

リンク召喚は遊戯王OCGにカードゲームとしての奥深さを与えるという点では、大きく成功したルールでもあります。9期のインフレに対し、リンク召喚を導入することで環境を低速化。融合・シンクロ・エクシーズの大量展開を抑止しました。

リンク召喚はシンクロ召喚のようにチューナーモンスターを必要とせず、エクシーズ召喚と異なりレベルを揃える必要もありません。特殊召喚の中でももっとも条件が緩い召喚方法の1つです。モンスターを簡単に墓地に送ることができ、墓地肥やし戦術の一環としても有効。トークンの活用もしやすく、大きく戦術の幅を広げました。

「リンクマーカー」「位置」の概念を定着させたこともリンク召喚の功績の1つです。たとえば、カードの置き位置と効果が大きく関わる《無限泡影》。遊戯王OCGに位置の概念が導入されたことの面白さは否定できません。

2020年4月以降の遊戯王OCGの新ルールと環境はどうなる?

2020年4月以降の遊戯王OCGの新ルールと環境はどのように変わるのでしょうか。リンク召喚が相対的に弱体化する一方で、罠カードを巡って興味深い動きが続いています

《処刑人マキュラ》エラッタによって制限復帰

効果モンスター(制限カード)
星4/闇属性/戦士族/攻1600/守1200
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがモンスターゾーンから墓地へ送られた場合に発動できる。
このターンに1度だけ、自分は罠カードを手札から発動できる。

まず大きな動きは《処刑人マキュラ》の、禁止入りから15年ぶりの制限復帰。制限復帰に当たってはエラッタが施されました。エラッタ前のテキストは下記の通り。エラッタ前のテキストでは、《処刑人マキュラ》を墓地に送る方法を問わなかったため《ライトニング・ボルテックス》や《おろかな埋葬》との相性が良好。一方、エラッタ後は「モンスターゾーンから墓地へ送る」ことが条件。リンク召喚のコストなどに使用すると良いでしょう。また《処刑人マキュラ》のサーチは《増援》などを使用すると良いでしょう。

このカードが墓地へ送られたターン、
このカードの持ち主は手札から罠カードを発動する事ができる。

手札からの罠カード発動は、極めて強力な効果。たとえば手札から発動する罠カードを《トラップトリック》とすることで、デッキから罠カードをサーチしてそのまま発動可能。手札、もしくは《トラップトリック》経由で発動する罠カードを《魔力の棘》や《残骸爆破》とすることで先行1ターン目から1キルを狙うこともできます。

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【サイコショッカー】強化

速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分フィールドに「人造人間-サイコ・ショッカー」が存在する場合、
フィールドのカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
この効果でフィールドの罠カードを破壊した場合、
さらに以下の効果から1つを選択して適用できる。
●フィールドの表側表示のカード1枚を選び、その効果をターン終了時まで無効にする。
●自分フィールドの全ての「人造人間-サイコ・ショッカー」の攻撃力は800アップする。

《処刑人マキュラ》制限復帰による罠カード強化が図られる一方で、罠カードメタとして《人造人間サイコショッカー》関連の強化も。新たに登場する《電脳エナジーショック》は、自分フィールドに《人造人間 – サイコショッカー》が存在する場合、フィールドのカード1枚を破壊できる速攻魔法。罠カードを破壊した場合には追加効果もあり、積極的な効果発動を狙う場合、自分の罠カードを破壊することも視野に入ります。

罠カードの復権によって「ルールのシンプル化」「デュエルの低速化」を両立?

《処刑人マキュラ》【サイコショッカー】による、罠カード関連の強化・メタカードの追加が進んでいます。リンク召喚を相対的に弱体化しつつ、罠カードを強化することでデュエルの低速化を図る狙いが見えます。