2019年9月末に最終回を迎えた「遊戯王VRAINS(ヴレインズ)」。
デュエルリンクスから引き継いだ「スピードデュエル」「スキル」などポジティブな新要素があり、なおかつVR空間の演出など野心的な試みが多数ありつつも、各要素を十分に生かしきれないまま打ち切りとなりました。結果的に最終回にかけて早足で展開が進み、シリーズ全体を通じてキャラクター同士の繋がりが希薄な仕上がりに。
遊戯王のアニメシリーズ全体を通じて、打ち切りが史上初。そうした状況の中、2020年からの遊戯王アニメ新シリーズの放映は決定しています。放送開始は4月と予測されます。
遊戯王の新シリーズの放送開始を前に、すでに明らかになっている情報と予測される内容をそれぞれ整理。かつここ数年の遊戯王アニメの動向を振り返りつつ、新シリーズの内容予想をしていきます。
遊戯王アニメ新シリーズ決定!
アニメ「遊☆戯☆王」新作TVシリーズの放送決定は2019年7月に発表。遊戯王OCGのカード1万種突破を記念する様々なイベント情報とともに、新作の情報が流れた形です。
下記の記事で考察している通り、遊戯王VRAINSのシリーズ構成は20話以上の削減の影響を強く受けています。おそらく2019年7月の新作発表の段階で、既に打ち切りは決定。この段階で既に新作アニメの内容検討に入っている可能性が高く、従来のTVシリーズに比べて準備期間が長く取られます。
決定している内容
2019年10月の時点では新作に関する内容はほとんど明らかになっていません。
2020年放送開始
確実に明かされているのは、2020年に放送開始という一点のみ。
2020年という数字は遊戯王のアニメシリーズにとって『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』放送開始20周年のアニバーサリーに当たります。
遊戯王OCGは2019年2月から20周年のアニバーサリーイヤーに突入しており、20th ANNIVERSARY LEGEND COLLECTIONの発売など様々な商品展開を行なっています。「モンスターアートボックス」ではカード9600種類を収録。貴重なカードのラフ画資料が収録されます。
こちらの記事で考察している通り、20周年を迎えた遊戯王OCGの売り上げはTCG業界の中でも圧倒的です。
2020年に放映開始となる遊戯王のアニメシリーズは『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』放送開始20周年にして、遊戯王シリーズのアニバーサリーイヤーの締めくくりとなる作品に位置付けられるでしょう。
予測されること
上記の前提を踏まえて、遊戯王の新作アニメシリーズにて予測される内容を1つ1つ見ていきます。
新マスタールールの登場がなければ基本は原点回帰
近年の遊戯王アニメシリーズは、遊戯王OCGのマスタールールの改定と密接に関連した内容に仕上がっています。例えば「遊戯王VRAINS」はリンク召喚、「遊戯王ARC-V」はペンデュラム召喚が登場し、いずれの召喚方法も作品の世界観に大きく関わっています。
しかし両作は決して成功作とは呼べません。
「遊戯王VRAINS」のデュエルシーンはリンク召喚を含む実際のデュエルを抜け漏れなく描きこむという方針を採った結果、放送枠に対してデュエルが異様に長く、打ち切りの影響もあってキャラクターが空疎になるという結果になりました。
「遊戯王ARC-V」は「カードゲームで戦う意味がない」と揶揄されるほどデュエルが軽視されており、最終話では敵キャラクター1体に対して11名のデュエリストが乱入する事態となりました。ストーリー性と複雑なマスタールールの両立という課題を扱いきれず、作品が自壊してしまった悪例と言えるでしょう。
次回作もまた新マスタールールの登場と、アニメ作品へのマスタールールの応用はあるのでしょうか。2019年10月時点ではいずれも不明ですが、管理人は「新マスタールールは登場せず、作品が原点回帰に向かう」と予測しています。
理由は遊戯王OCGの20th ANNIVERSARY LEGEND COLLECTIONの好調な売り上げにあります。2019年2月の遊戯王の販売金額は53億2000万円。2位のポケモンカードは12億2000万円。遊戯王OCGは2月にTCG業界の中で、圧倒的な首位を獲得することに成功したのです。この時期の売り上げの主力が「20th ANNIVERSARY LEGEND COLLECTION」と「インフィニティ・チェイサーズ」でした。特に前者の売り上げだけで27億円に達します。
2018年9月には遊戯王OCGの売り上げは18億円。デュエルマスターズが19億9000万円を売り上げ、遊戯王OCGは一時的に国内No.1の座をデュエル・マスターズに譲り渡しました。遊戯王OCGが再びトップの座に返り咲いたのは紛れもなく、20th ANNIVERSARY LEGEND COLLECTIONの力。ひいてはやはり原作者・高橋和希氏の人気や、原作キャラクターたちの使用カードやモンスターの人気にあるでしょう。
- 20th ANNIVERSARY LEGEND COLLECTIONの好調な売り上げ。
- 『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』放送開始20周年
- 近年のアニメシリーズの失敗
この3点を理由に新マスタールールを登場させず、作品は原点に向かうと予測します。恐らく遊戯王VRAINSにおけるVR空間や、遊戯王ARC-Vにおけるパラレルワールドのような複雑な世界観設定も特にないでしょう。
遊戯王OCG10000種類突破との絡みがある?
遊戯王の新作アニメの制作決定は、遊戯王OCG10000種類突破とセットで報道されました。
「遊戯王OCG10000種類突破」という内容が直接的にアニメ作品と絡むことはないでしょうが、例えば第1話のパブリックビューイングと会場限定配布カードの作成など何らかの形でOCGとの絡みがあるかもしれません。
デュエルリンクスのルール・世界観が一層反映される?
遊戯王のアニメシリーズの視聴者層は基本的には小学生を想定しています。例えば遊戯王ZEXALは明るい作風で低学年層にアプローチしています。ダークな世界観を持つ遊戯王VRAINSはどちらかといえば大人向けで、従来の遊戯王シリーズに対して異端に位置付けられます。
小学生を主な視聴者に設定する場合、避けて通れないのがデュエルリンクスです。初めて触る遊戯王カードがTCGではなく、デュエルリンクスだという視聴者は一定数存在するはずです。
遊戯王VRAINSで採用されたスピードデュエルやスキルといった設定は引き続き次作にも採用される可能性があるのではないでしょうか。
またデュエルリンクスの主なキャラクターは「遊☆戯☆王 デュエルモンスターズ」の登場キャラクターです。管理人は次作のアニメシリーズは「遊☆戯☆王 デュエルモンスターズ」を全面的に扱うものになる可能性が高いとも考えています。
デュエルシーンは短縮に向かう?
遊戯王VRAINSが野心的な試みをしながらも挫折したのが、デュエルシーン。OCGに準じて、デュエルを省略なく描き切ろうとした結果、延々とソリティアを描くといった結果に終わりました。
次作ではスピードデュエルを基調としつつ、キャラクターのスキルをよりフィーチャー。必要に応じてデュエルの省略もありという形に方針転換するのではないでしょうか。
主人公のメインモンスターの攻撃力は2500をキープ?
遊戯王のアニメシリーズの主人公は歴代、代々攻撃力2500のモンスターを扱ってきました。
初代の《ブラック・マジシャン》に始まり、《スターダスト・ドラゴン》《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》《F・W・D》など攻撃力2500のモンスターは「お約束」です。
次作の主人公の使用モンスターも、確実に攻撃力2500でしょう。
主人公のメインモンスターが通常モンスターになる可能性がある
遊戯王VRAINS失敗の一因が、F・W・Dの禁止カード化。作品放映中に主人公の使用モンスターが禁止カード化するのは異例の事態でした。
F・W・Dの禁止カード化の前例を受けて、主人公のメインモンスターが効果モンスターではなく通常モンスターになる可能性もあると管理人は予測します。
新作内容予想
続けて新作の内容を予測していきます。
予測1『遊戯王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』に繋がるアニメシリーズリメイク
管理人がもっとも可能性が高いと考えているのが、『遊戯王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』へと直接的に繋がるアニメシリーズのリメイクです。
『遊戯王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』は2016年4月に公開された遊戯王20周年記念作品。原作漫画の正当な続編に位置付けられ、『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』のスタッフが多数参加し、音楽もアニメシリーズのものを踏襲している一方でアニメシリーズとは設定が異なります。
もっとも設定が違うのが、海馬です。
アテムを見送ることができなかった海馬の苛立ちや執着にフォーカス
『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』では最終回でアテムを見送った海馬。一方で原作漫画では、海馬はバトルシティ編以後ほとんど出番がなく、アテムを見送ることもできていません。つまり海馬は、アテムに勝ち逃げされた状態です。
『遊戯王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』はアテムに執着する海馬の狂気が、物語全体をドライブさせています。そして『遊戯王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』には「藍神」という新規キャラクターが登場し、次元領域デュエルという新設定も登場。
『遊戯王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』は様々な解釈の余地を残す映画です。極めて重要なエピソードが描かれており、次元領域デュエルという新設定も登場している一方で原作漫画を読まなくては理解できない状態はやや歪ともいえます。
また20周年記念作品の終了後には、その時点の新マスタールールに沿った作品を制作するという選択肢と『遊戯王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』のラストシーンを起点とする新作を制作するという2つの選択肢を持つことが可能です。
そのため『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』を『遊戯王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』に繋がる形でリメイクするという構想は20周年記念作品として有力だと考えます。
追記
2019年12月の「ジャンプフェスタ2020」で、遊戯王アニメシリーズ最新作「遊戯王SEVENS」と新たなデュエル方式「遊戯王ラッシュデュエル」が発表されました。遊戯王ラッシュデュエルは、従来の遊戯王OCGとは別のカードゲームと位置付けられており、カードデザイン・カードプール・ルールが全て異なります。
「遊戯王SEVENS」以降のアニメシリーズは、遊戯王OCGではなく、遊戯王ラッシュデュエルを取り扱うものと予測されます。
こちらの記事で「遊戯王ラッシュデュエルとは何か」「遊戯王ラッシュデュエルと遊戯王OCGの違いは何か」「遊戯王ラッシュデュエルの導入の狙いは何か」「リンク召喚導入〜遊戯王VRAINSまでのOCG・商品展開は失敗だったのか」を細かく解説しています。ぜひ参考にしてください。